リンダ。リンダ。

リンダリンダラバーソール (新潮文庫)

リンダリンダラバーソール (新潮文庫)

読み終えた後、何とも言い難い複雑な気分になった。


少し前までは、大人に成れば仕様も無い不安だとか、将来に対する恐怖だとか
そういう類のものは段々と薄められていくものだと思っていた。
勝手に。


結局、大人になった今、将来への不安や恐怖は徐々にリアルに
鬼気迫るものがあり、『まぁ、なんとかなるさ』とか言っている余裕も無い。


この本の舞台は、80年代後半から90年代前半に起こったバンドブームの話。
著者は、筋肉少女帯大槻ケンヂ。現在は、特撮というバンドを組んでいて
犬犬犬犬!!!猫猫猫猫!!!!と歌い叫ぶ。


人の世は移りにけりないたずらにとはよく言ったもので、
流行っては廃り、流行っては廃り、
そうして、世界は常に何かしらのムーブメントの中に在る。

10年余り前、そのムーブメントの真っ只中に居たのが大槻ケンヂであり、
ブルーハーツであり、ユニコーンであり、ブランキーであったりする。
当然、聞いた事も無いバンド、名前だけ聞いたことのあるバンド、
もしかしたら曲を聴いたら知ってるバンドも多数。

夢を手にした者達の不安と葛藤。
焦り、失速、失脚、衰退、絶望、搾取、ステップアップ、現状維持、方向転換。
そう言った話が軽いタッチで描かれている。



別に、バンドマンじゃなくとも誰しもが何かしら将来、先の事に不安を抱いている
ものだから、文章全てが心に染み込んでいく感じがした。
わかる、わかるその気持ち的な。


然しながら当時は、ライブで前列の女子の乳を鷲掴みしただの、
観客をステージに上げカレーのルーを顔にかけるだの、
ライブ中に正露丸をばら撒くだの。
奇想天外なライブパフォーマンスがあったようで体験してみたかったものだ。


この本のエピソードはどれも面白いし、興味深い。
私はオーケンとコマコの話が好きだ。
私もこういう風に何気なく好きな人を支えたり、元気付けたりできたらいいなとおもった。


だから、読み終わった後、複雑な気持ちになった。
爽快な気持ち、鬱、希望、色んな思いが混ざった。
何時もの事ながら上手く表現が出来ないのがもどかしい。


『あのね、多分、大人になるって、逃げ出せないことと、面と向かい合うことなんだと思う。
今逃げたってまたピンチは来るの。逃げ場なんてない』


コマコの言葉が耳に痛い。


今の自分、これからの自分、もっと先の自分。
もっともっと先の自分に「これでいいんだ」と納得のいく人生を歩めるだろうか。
リンダリンダ』を聴きながら。
まとまらない思いをタイプしてる私は、本当に大丈夫なんだろうか?